前作【秋】の続きです
『雨が降っている』
現実逃避のように脳内導き出された現在の状況は、
全く自分でも理解のできないものだった。
9月27日午後6時。噂の彼を尾行中
皆そうだと思う。古きとか、同胞とか、現代っ子は使わ
ない。だから、罰ゲームの定番が彼の相手を突き止める
になるのは、至極当然の流れだった。
しばらくしたら皆巻かれてしまうんだけど、今回はずっ
と追いかけていられた。だんだん気温が下がっていって
、白い息が見えはじめる。そうしてたどり着いた場所
は、白をかぶった針葉樹の森の中で、そこにひとつ置か
れたベットだった。
彼はそこに近づくと、何やらつぶやく。誰がいるのかは
ここからでは見えなかった。不意に、つむじ風が吹く。
視界が開けた時にはもう彼はいなくて、代わりにベット
の上に純白の青年が座っていた。その人が与える印象
を、なんと表現すればいいのだろう。限りなく静謐で、
広大で、美しかった。
数歩、近づく。体中を突風が包み、コートに雪が積もる
この人も、怒るんだろうか?静かに佇むその人に尋ねた
「まるで、貴方は冬みたいだ。」
白を纏った青年は、なんともいえない表情で笑っていた
【通り雨】
9/27/2023, 3:03:33 PM