大空
あの澄みわたる大空から
きっと、俺は落とされたんだ。
空の上で、僕は必要とされなかったから
捨てられたんだよ。
「…なぁ、あの空の上には何があると思う?」
そんなことを聞いたって無駄なのは分かってるけど
しょうにだけは、聞いてまうんよな
「んー、宇宙?笑
…大丈夫、れんが思ってるようなことじゃないよ
捨てられたんじゃない。俺の元に、俺を助けに
れんはここに来てくれたんだよ。」
そうやって、俺を安心させてくれるんよ
いままではそれで足りとった。
でも、今日はどんどん想いが溢れてくるみたい
もっと欲しい、そう思うのは
俺がしょうに恋してるから?
「…っ、信じたいけどな、そんなこと言われて
素直に信じられるほど、俺の心は綺麗やない。
いつも、そんなの綺麗事にしか聞こえん!
そんなの、分かんないよ、もう、俺出てく!」
何度も俺を呼ぶ声が聞こえる。
けど、それを避けるように。
気持ちからも逃げるように
俺は闇に向かって走った。
…ほんと最低だよな、
しょうは、空から落ちてきて、
ひとりぼっちだった俺を
蔑むことなく、引き留めてくれてたのに。
優しく、包み込んでくれたのに。
なんで、手放してしまったんやろう。
今になって思う。
きっと、俺はしょうに恋をしている。
でも、優しさがほしいと思う分、
しょうの優しさが、澄んだ心が、
俺の心に突き刺さる。
お前は不釣り合いだ、と。
「…もう、会えんよな、
最後に一回だけ、会いたかったな…」
「…なに、いってるの。
ずっと、れんは俺の隣にいるんだよ。離れんな」
不意に、後ろから抱き締められて耳元で囁かれる言葉。
そんなん、もっと好きになるやん、
「…っ、離せ、もう、俺のことなんて嫌いやろ、
あんな、あんな酷いこと言って、隣になんておれん、」
本当は、ずっと一緒にいたい。
幸せな時も、辛い時も、どんなときだって隣で笑い合うのは俺がいいよ。でも、そんな想いとは裏腹にあふれでる言葉。
涙を流すことしか出来なかった。
「……れん、れんがどう思おうと、俺は一生
れんの隣から離れたりしない。
あの日、あの場所で出会った時から、
全ては始まってる。れんがどんなに捨てられたって思おうと、俺には関係ない。俺に出会うために、俺を助けに来てくれたんでしょ?空の上で、れんに価値がなくたって大丈夫だよ。捨てられてここにきたのかもしれない。
でも、今はもう、ここで価値のある一人の人間でしょ?
いつも、俺を支えてくれてる。それだけで十分なんだよ。
お願いだから、俺の側で、ずっと支えててよ。」
いつだってしょうは、俺の心に寄り添ってくれてた。
たとえ綺麗事だとしても、きっとそれを信じていれば、
いつかは本当に起こるんだろう。
こんなに、しょうは俺に付きっきりで励ましてくれてる
その優しさに、気付いてるつもりだった。
全然気付けてない。綺麗事、そう思って聞いていた言葉
違う、そうじゃない。しょうは、そうだと思ってる
綺麗事を、正当化しようとしてる。
それが正しいのか、正しくないのか
それはきっと受け取り方次第だ。
「……っ、しょう、ごめんな。
ずっとずっと、しょうのその言葉が重荷やった。
そうやって言ってくれてても、不安になる。
自分の出来なさに幻滅する。その度に、
あぁ、やっぱ価値のない人間で、捨てられたんやなって
でも、今は違う。しょうが、そう思ってくれてる。
それが正しいのかはまだ分からないけど、
捨てられたのかもしれないけど、
俺は、ここで証明する。しょうの隣で、胸張って笑えるように。捨てられたかもしれない過去も、全部拭っていいものにする。やから、しょう。これからもずっと側にいてほしい。……それと、しょう、大好きやで。愛してる。」
要らんこと言うた、
「……っ、れん、俺も好き。愛してる。
れんを、ずっと側で支えられる人になるよ。俺と、付き合ってくれる?」
「うん、よろしくな、しょお。」
澄みわたる大空は、いつしか星空に変わっていた。
嫌いだった大空は、澄んでいて、
今では大好きなものになった。
12/21/2023, 10:23:35 PM