灰田

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「あの頃の私へ」

あれは、おまえにかけられた罠だった。
だから、

あの時おまえは、そうするしかなかった。
…そうするしか、知らなかった。

罠だということに、氣づいていなかったから、
逃れようもなかったんだよ。

あるいは、罠だということに氣づかなくてもよかった。
氣づかなくても、その場所が、その立ち位置が、本当に「本当に」嫌なら、
そこから逃げ出す選択が出来るから。

結局おまえは、後者の方法を選んだ。
「嫌だ」って心底思ったから、そこからここまで、
おろおろしながらも、
…ちゃんと歩いて来れたんだ。



あの頃の私っていうほど遠くない。
「嫌だ、何でこんなになってるんだ」って思いながら目覚めるのは、
奈落の底まで堕ちてその底に触れたら、黒い魔法が解けて、

逆方向へ走り出すーーーーーー→

…って事だ。









5/24/2024, 11:06:40 AM