名もなき手紙
名もなき手紙を私はもっている。いつの時代のものか一歳わからない。字が古い、汚い。しかし、必死に書いたという筆跡が残っている。日本語で。
よくわからないがこの手紙にはこう書かれている。
「貴女に会いたいと、ずっと忘れられない貴女を探して旅をした旅人です。貴女に会えるまで諦められない。星にも願うけど虹にも願うけど何故か会えない 貴女へ」
…少し前のとても人気を博した物語、の手紙と似ているようでやや異なる。 続きにはこのように書かれているからだ。
「生前に助けていただいてから、そしてその後も墓に行くたびに
『あのねぇ、お嬢さん。死んだ私の財産のお礼なんていいんだって』
『白米を混ぜることなく食えただけで、その上売られる前に…なんか痛みもなく殺してくれた貴人、いやその方も泣いてて困ったんだけどさぁ』
『むしろそれ使って生きてくれよ。べっぴんさんなんだからさ。なんで江戸の下にいたのか私にはよくわからんけど前向きなよ。それとこの記憶なんて捨てな』
『今のあんたさんがこの話をして誰も信じ無いだろ?あん時よりさらに美人になったな。まぁ過ぎたものはないんだ。どうしても私に会いたいなら』
『本当の覚悟ってものをとあるところに突きつければいいんじゃないの?』
その覚悟は…ある!私にはありますから!」
と、涙の跡で書かれていた。
…さぁ、私にはなんのことがわからないし非科学的なことは嫌いなのだ。伝承と信仰に、統計学によるものなら信用するがそれでも違う世界にいるものが出会えるわけがないのである。
1/26/2024, 10:19:35 PM