雲がなくても降り止まぬ雨
お題『いつまでも降り止まない、雨』
長き梅雨が過ぎ、空は明るくなってきた。
花や草、車、建物は雨の雫を落とし、生き物は元気に外に出る。
雲は跡形もなく消え、太陽は地上を優しく見つめるように照らす。
しかし、一人だけ雨の中に取り残された人がいた。彼は先の見えない未来に希望を見出だせず、悲しい表情を浮かべ、水溜まりを見つめている。
水溜まりに映った自分の顔は、雨雲のようにどす黒い。見れば見るほど情けなくなり、悲しくなり、涙が溢れてきた。
彼はまるで雨雲のように大量の雨を降らせた。水溜まりに映るもう一つの世界に。
空がどれだけ雲がない心地いい天気でも、彼の心は降り止まぬ雨でいっぱいだ。
彼の梅雨は、いつ終わるのだろう。
5/25/2023, 4:25:09 PM