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こたつにみかん。
そのみかんを頬張るのは、着込みすぎてもこもこの彼女。
これ以上ないほど冬の風情のある光景だ。

「エアコンもうちょっと上げる?」
「ううん、大丈夫。暑いでしょう?」
「どちらかといえば、まぁ」

日課のランニングを終え、軽くシャワーを浴びてホカホカの身体。
冷え知らずで、冬でも薄手のTシャツとジャージ姿の自分。
対して万年冷え性で、あの手この手で冬を乗り越えようとする彼女。もこもこの部屋着にあらゆる上着を重ねてまんまる。
これまたもこもこのソックスにもこもこのアームカバーも装着しており、手足の防御も完璧だ。

「でも大丈夫、雪見だいふく食べるから」
「この寒さで、アイスを…?」

信じられないと言う彼女の視線を感じながら
エアコンの設定温度を2度上げた。

「冬って感じしない?」
「そうかしら」
「だってお餅だよお餅。食べる?」
「遠慮しとく。寒いし。みかん食べてるし」
「残念」

アイスを冷凍庫から取り出し、彼女の入ったこたつにお邪魔すると、もこもことした感触が足に当たる。

「これ履いてると汗で冷えない?」
「だって、床冷たいんだもの…」
「確かに。いつか引っ越しするときは床暖あるとこがいいねえ」
「良いわね。でも、あなたがのぼせちゃいそうよ?」
「家に居れなくなっちゃう!?」
「それは私も困るわね。帰ってきた時は家にいてほしいし…」

急に彼女がしゅんとする。
縮こまるもこもこが、もそもそとみかんを口に運んでいる。
かわいい。
へへ、と締まりのない笑いが出てしまい、
彼女もふふ、と笑ってくれる。

幸せだった、そんな冬の日。

12/30/2024, 3:55:36 AM