猫背の犬

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なんだかどうしようもなくやるせなくなって、投げやりになった僕は、君の嘘に気づかないふりをした。きっと訪れることのない「またね」を気まずそうに呟いて、部屋を出ていく君の背中に、息を吐き出すようにそっと言った「さよなら」は、ひどく掠れていた。思えば、届かないことばかりだった。ほんとうは、どう思っていたのか。ほんとうは、どうしたかったのか。わかっているけど、わからないふりをしたまま、冬が深まっていく。春になる頃、僕はここから居なくなる。やがて君も僕を忘れてしまうだろう。出会った頃の思い出も、共有してきたいくつかの時間、交わした会話のすべてが雪解け水に浸り、希薄なっていく。たぶんこんなもの悲しい未来しか描けない僕らだったのだ。どのような行く末だったとしても、共通する思い出のすべてが、夏の日差しのようなまばゆい幸せだったらよかったのにね。

1/14/2025, 11:06:09 AM