たつみ暁

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「我々の祖先は、この星の海を渡り、この地に辿り着いたという」
先祖代々受け継がれてきた技術で編まれた空飛ぶ船から、満天の星空を見上げながら、兄は幼い俺に語った。
「祖先の星は、資源を掘り尽くし、残り少ない生きる糧を求めて激しく争い、我々には想像も及ばぬ武器をもって、ひとの住めない大地にしてしまったんだ」
その愚かな血を俺たちも受け継いでいるのかと問えば、兄は困ったように赤い瞳を細めて苦笑した。
「おまえはまだ幼いのに、皮肉屋だな」
ぽん、と。頭に兄の武骨な手が乗せられ、くしゃくしゃと髪を撫で回される。
来年には、俺もこの船の正式な一員になって、銃を握ることができるのに。子供扱いに頬を膨らませると、兄は声をたてて笑った。
兄の豪放磊落な性格が好きだった。将来のこの国の指導者としての素質を存分に備えたカリスマ性を尊敬していた。
今は子供扱いでも、何年かすれば、頼り甲斐ある右腕として立てることを夢見ていた。

今、大人になった俺は、一人で星を見上げている。
『ひとは命を終えたら星に還るんだ』
そんなことは無かった。兄の魂のゆくえを、俺は知っている。
兄が守るこの船で、守ってみせよう。
狂った神が滅ぼそうとしている、この世界を。

2025/03/11 お題「星」

3/11/2025, 11:01:44 AM