可愛いあのこ。話したことは無い。
いつも僕が眺めているだけ。
外を眺めて、たまに小さな欠伸をして、またたまには本を読んで。そんな、誰とも関わろうとしない彼女を僕は目で追っていた。いつからだろうか。
話したい、触れたい、何度願ったことだろう。
今日は、僕の心を表したような雨模様だった。
今日も、話せず一日が終わる。傘を手に取り昇降口から出ようとすると、“彼女”が空を見てなにか悩んでいるようだった。ぱっと、僕の顔が明るくなった。傘を忘れたのかな、話しかけようかな。そう悩んでいる時、空はいきなり明るくなった。 天気雨のようだった。やっぱり、空は僕の心模様を表しているのだと思った。
相合傘の夢は消え、雨上がりの中昇降口から出ようとすると“彼女”が声を発した。
「相合傘、したかったね」
それが僕に発された言葉だと気づくには、そう時間はかからなかった。
6/19/2024, 11:20:56 AM