スランプななめくじ

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君を一番理解しているのは僕だと思ってた。
冷たい眼差しに見えるその瞳はすぐに涙を零すし、
滅多に開かないその口は意外と強い毒を吐く。
高嶺の花だと敬遠されている君は、
案外抜けているし、よく笑う。
神のように崇拝されている君は、
誰も知らないだけで、誰よりも人間らしい。

僕だけが君のことを知っている。理解している。
それがなんだか、どうしようもなく嬉しかった。

僕は愚かにも、君の全てを理解した気になっていた。

君は僕の知らない笑顔を、知らない人に向けていた。
なんだその顔。誰だその人。僕は何も知らなかった。
胸の奥が嫌な音を立てた。酷く痛んだ。
思わず視界が滲む。

この感覚は、知っている。失恋だ。
君への想いは、優越感なんかじゃなかった。

「僕、君が好きだったんだ。」

6/3/2024, 6:06:55 PM