彼女が落としたネックレスを、いつまでも捨てられずにずっと持っている。
「必ず帰るから」
そう言った彼女を信じて、いつまでも。
「また会うまで持っていてよ」と、彼女に託されたようで。
あれから数年。未だ持ち主は現れていない。
「俺のじゃねーんだぞ……」
あまりにも持ち主と長い間離れすぎて、まるで今じゃ自分の物になってしまったようだ。たしかに、元々自分が手に入れた物で、それを彼女に渡したのだが。
彼女が帰ってくるまで。彼女の首に再びこのネックレスが掛けられるまで。いつかその日が来るまで。
「早く帰ってこいよ」
あの日の言葉を信じて。宝物のように、大切に手元に置いておく。
『いつまでも捨てられないもの』
8/18/2023, 6:48:28 AM