かたいなか

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「『まだ知らない』のが、自分なのか、相手なのかで、変わってくるわな」
今日は随分長い文章になっちまった。某所在住物書きは今回投稿分の字数を確認して、ぽつり。

アプリをインストールして投稿を始めた当初は、800字もあれば多い方であった。
それが投稿を重ねるごとに、1000字突破が普通となり、1500字を超えるようになり、
今では、400字詰原稿用紙が4枚必要な状況。
2025年の終わりは何文字の投稿をするのか。

「知らねぇよな。知らねぇな……」
それこそ、「まだ知らない」。

――――――

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界多様性機構」なる厨二ふぁんたじーな団体組織があり、
ここの特殊潜入課、通称「特潜課」には「ミカン休暇」なる隠語が存在している。

その「ミカン休暇」とは、何ぞや。
妙な謎を残して終わったのが前回投稿分であり、
今回投稿分がまさしく解答編。
ミカン休暇の何たるかを「まだ知らない新人君」のおはなしである。

多様性機構には「世界線管理局」なる敵対組織が存在しており、
ミカン休暇は、特潜課をはじめとした機構側の職員が、スパイなり工作員なりとして管理局に潜り込んだ結果として発生する休暇のこと。
要するに何がどうしてどのようにミカンなのか、
詳細をまだ知らない新人君は、その日が初めての管理局潜入任務であった。

「おまえの仕事は、収蔵庫の撮影だ」
ミカン休暇をまだ知らない新人君の、最初の仕事は敵対組織の内情記録である。
世界線管理局は、滅んだ世界から漂着したチートアイテムを、回収して、収蔵している。
それらが他の世界に流れ着いて、悪さをしないようにするためだ。

収蔵品の中には光を金に変える貯金箱だの、
生い茂る雑草を水晶に書き換える万年筆だの、
どこかの漫画かカートゥーンで見たようなご馳走をたわわに実らせるヤシの木だの、
多様性機構の組織運営に非常に役立ちそうなアイテムが多種多様、大量大漁。

多様性機構には、資金が無い!
よって、管理局の収蔵品を、拝借できるものなら片っ端から拝借して、それで機構の運営資金節約の足しにしようと、
日々、虎視眈々、狙っているのである。
新人君はその収蔵庫のひとつの撮影を任された。

「いいか。絶対に、ゼッッタイに、『ミカン』の前で怪しい行動をするな」
新人君の教育係が言った。
「収蔵庫に居るミカンは、『管理局の悪魔』の監視カメラであり、警備員だ。収蔵部の制服を着ていても、妙な真似をすればすぐバレる。
いいな。ミカン休暇を取りたくなければ、『ミカン』の前で、怪しい行動をするなよ」

はい、はい。フラグである。

管理局の悪魔をまだ知らない新人君はお約束どおり、収蔵庫でコロコロ自発的に転がる「しらぬいタイプのミカン」を見つけると、
「なんだ。本当に、ただのミカンじゃないか」
コロコロミカンの行く手をさえぎり、ぽぉん、軽く蹴飛ばしていじめてみせた。
「何故先輩は、こんなものを怖がっているんだ」

その「軽くいじめた」のがよくなかった。

ビーッ、ビーッ、ビーッ!
怒ったらしい「いじめられたミカン」が、ポンポンジャンプして警告音を鳴らすと、
ころころころ、ゴロゴロゴロ!
あっちから、そっちから、上から横から、24個のしらぬいタイプミカンが一気に集まってきて、
たちまち、新人君を縛り上げ、ベルトコンベアで運ばれる梱包物よろしく輸送を開始したのだ。

「わっ!なんだ!やめろ!降ろせ!」
何も知らない新人君は、ミカンのコロコロローラーにのせられて、廊下をわたり角を曲がる。
その間に遭遇した管理局員は、
また敵さん、ウチにスパイをよこしたの?
だの、
どうせ不知火さんとポンデコさんに見つかっちゃうんだから、諦めれば良いのに
だの、
言いたい放題、珍しがりもしない。

スパイの摘発と運送は日常茶飯事なのだ。

ころころころ、ゴロゴロゴロ。
自分の結末をまだ知らない新人君が、連れてこられたのは管理局の、経理部のコタツの前。
「おまえか!俺様の大事な大事な、不知火たちをいじめた悪いスパイは」
水晶の透明度と輝きを放つ文旦を、ふきふき、フキフキ。コタツの主の女性が言った。
「いつもなら、お前から情報を抜けるだけ抜いて、それから最後にこのコタツ、Ko-Ta2でスポンしてやるところだが、
今の俺様は機嫌が悪い。お前を携帯型Ko-Ta2の試作機、Ko-Ta4の実験台にしてくれる!」

うぃんうぃん、ウィンウィン、ピピピッ
意味不明を言い続けるコタツの主は、なにやら小さなコタツを組み立ててボタンを押した。
コタツなのに妙なモーター音と電子音がひとしきり鳴り続けて、ピタリ。

「よし。スイッチ、オン!」
コタツの主が再度ボタンを押した。
うぃんうぃん、ウィンウィン。
コタツの中に、新人君の足がのまれていく。
うぃんうぃん、ウィンウィン。
コタツの中に、新人君の体がのまれていく。
ピピピッ、ピーピー、うぃぃーん!
新人君のすべてを飲み込んだ携帯型コタツは、コタツらしからぬ音を鳴らし続けて、

スポン。 コタツの上に設置されたカゴに、1個のミカンを生成した。
「あるぇ?ミカンっつーか、レモンじゃん。
アレだ日向夏とレモンの交配種だ。
……まだ調整が完璧じゃねぇのかな???」

これが、「ミカン休暇」の真相であった。
これこそが、前回投稿分で濁したミカン休暇の過程と結果であった。
その後新人君がどうなったか、救出されたのかカゴの上に取り残されたままなのかは、
新人君の仲間のみ知るところである。

1/31/2025, 4:00:09 AM