『ごめんね』
(男性同士の恋愛を匂わせていますので、苦手な方はお逃げくださいませ)
「怪人アクマイダー! お前の好きにはさせない! 正義に呼ばれてジャスティスセブン只今参上!」
「来たなジャスティスセブン! 今日こそ返り討ちにしてやる!」
ビシッと決めポーズを決める正義の味方・ジャスティスセブン。
対するはグロテスクな怪人・アクマイダー。
派手な立ち回りが始まる。
さっきのテイクで迫力が足りないと監督に言われたせいか、ジャスティスキックが勢いあまって怪人の腹にモロに入った。
そのままうずくまりたい衝動を抑え、怪人アクマイダーはグッとこらえると捨て台詞と共に姿を消した。
「なかなかやるな、ジャスティスセブン! 今日はこの辺で許してやる!」
「ミッちゃん、ごめんごめん。」
小走りに近づいた俺は、「お待たせ~」と言いながら車に乗り込む。
待っててくれたのは、正義の味方・ジャスティスセブンの中の人こと、中臣光希。
「走ってこなくてもいいのに。怪人はメイク落とすの大変だってわかってるんだから」
変身後の姿がフルフェイス仕様のジャスティスセブンと違って、俺の怪人アクマイダーは、実際の顔との繋ぎ目が特殊メイクで落とすのがなかなか大変だったりする。
勿論最初のメイクも、時間がかかるし。
でもいつもミッちゃんは、俺と同じ時間に出てくれるし、終わったら待っててくれる。
愛されてるなぁ、俺。
なんちゃって、反対の場合は勿論俺もそうするけど。
「それよりさぁ」
まだ車を出さずに、ミッちゃんが俺の方を向く。
「ごめん、大和! モロに腹に入っちゃって。本当にごめんね!」
両手を合わせての必死の謝罪。
「え、そんな大袈裟な。大丈夫だって」
「いやいやいや。あれは俺の完全なミス! 大和だからとっさに引いてくれたけど、普通ならシャレになんない。マジごめん!」
「ホント大丈夫だから。監督、俺がメイク落としてる所にわざわざ来て言ってたよ。さすがミッちゃんだし、さすが大和だって。良いシーンになって良かったじゃん」
「ごめんな。次からホント気をつけるから!」
真剣に怪人のことを心配してくれる正義の味方。
ちょっと可笑しくなってしまう。
「本当にジャスティスセブンとアクマイダーもこんな感じだったら地球は平和なのにな」
笑う俺に、ミッちゃんも大事無いと安心したのか、笑顔を返す。
「ジャスティスセブンとアクマイダーがラブラブになっちゃうの?」
「そ。そしたら、争いなんかなくって皆が幸せになれるじゃん」
「いいけど、そしたら第1話でめでたしめでたしで終わっちゃうよ。」
「良いじゃん。1年間、ジャスティスセブンとアクマイダーのラブラブ生活見せるとか」
「何だ、それ。ニチ朝の歴史が変わる」
そう。
そんな日曜の朝も良いかもね。
なんて笑いながら、正義の味方ジャスティスセブンと怪人アクマイダーは、2人の愛の巣に帰って行くのであった。
5/30/2023, 8:33:12 AM