喜村

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 深夜2時。あたりは暗くなったと言うのに、俺は車で一人でいた。
なんと、二十歳を過ぎたというのに、門限の12時に間に合わず、家から閉め出されてしまったのだ。
 家の前でエンジン音をかけたままだと、ご近所迷惑なので、キーは刺したままACCモードで車のシートを倒す。救いなのが五月の寒くも暑くもない季節だったということだ。
 サンルーフの車だったり、キャンピングカーなら、星空を拝めたかもしれないが、俺の車はそういうのではないので、こじんまりと窓の外を見る。
街灯もなく真っ暗。早く寝なくては恐怖心にかられるくらいのどいなかである。
 
 寝れそうで寝られない。
久々に車でラジオでも聞いてみようか。
今はもう聞かなくなった、真夜中のラジオ。
『時刻は深夜2時半をまわりました。ミッドナイトラジオ、エンディングのお時間です』
 こんな時間でも放送してるところがあるのか、と、俺はラジオに耳を傾ける。
 懐かしの歌謡曲や今話題の曲をなんとなく流しているような、そんな番組だった。
 なんだか恐怖心が柔いてきた、あぁ、これなら……
 俺は、ゆっくりと目を閉じた。真夜中に静かに溶けていった。

【真夜中】


※【ミッドナイト】の別人物で続編

5/17/2023, 10:35:12 AM