お題:【街へ】
硝子張りの壁の先。
赤色が美しく溶け込んだソレ。
例え、禁に類することだと知っていても、ソレを選ぶことに躊躇を覚えるはずがない。
慕うべき相手に、お叱りを受けたとしても。
誰かの葬儀は、奇しくもソレを魅せるには絶好の機会であった。
けれど、それは禁に当たる故のこと。
熱に宿る赤色は、ソレと似ても似つかなかった。
嗚呼、再びあの色と出逢うには、どうすればいいのだろうか。
ソレと出逢った場所は、最早、思考の内に留められていなかった。
悔いても過去は返ってこず、しかし、捨てれる想いならばそれほどに執着していない。
ある時、恋慕の想いは叶い、再びソレと逢い間見える。
一度目と同じく、硝子張りの壁を通して。
遂には、慕うべき相手も死の床についた。
けれど、だからと躊躇する必要はない。
死の床を踏みつけ、極彩色は舞った。
赤色の靴は、波紋を揺らして溶け込んだ。
1/28/2024, 10:53:16 AM