イオリ

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あなたに届けたい

 警備室でカメラの映像をチェックした。広い邸をふたりの子供が走り回っている。

 探していた瞬間が訪れた。あとを走っていた子供が花瓶台にぶつかった。ピンクの花をいけたガラスの花瓶が、落ちて砕けた。子供達は、少し呆然と眺めたあと、走り去っていった。

 邸の主に映像を見せた。カメラを確認してくださいと言われたことから、子供達は話していないのだろうとわかった。

 やれやれ、眉をひそめて主はいった。高そうな花瓶だった。

 保険が効くかもしれませんよ、と言ってみた。が、主の懸念は別のものだった。

 可愛い我が子を叱らねばならない。お金の問題ではない。もっと大事ものを伝えなければならない。そういうことなのだろう。

 お子さん、いましたよね。こういう時、どうすればいいんでしょう。主が私に訊いてきた。雇い主に対して気が引けたが、彼は率直な答えが聞きたいだろうと感じた。

 怒鳴らないほうがいい、といった。それから、できるだけ悲しい顔をして話してください、と。あの子達は、素直ないい子です。あなたの悲しい顔を見れば、きっとあなたの思いは伝わりますよ、と。
 
 

1/30/2024, 10:22:16 PM