過去に遡って運命を変えることが出来たとして、今出会っている人達との関係はどうなるんだろう?
例えば過去に遡って子供の頃にあった危機を逃れたとして、そこで大きく運命が変わってしまったら、自分はこの仕事をしていないかもしれない。そしたら今隣にいるコイツとの関係も、変わってしまうのだろうか? いや、そもそもコイツと出会ったことすら無かったことにされてしまうのかもしれない。
「·····なに考えてんすか?」
「なんでもないよ」
「エクレア、もっと食べます?」
「·····食べる」
「よく食べますよね、師匠」
「うるさいよ。考えは纏まったのか?」
「俺なりに考えてみたんすけど」
「言ってみな」
「その前に、クリームついてます」
「·····ぅ」
――どんな運命になってもいいけど、コイツとは離れたくないなぁ。
◆◆◆
エクレアが好物。
古びたトレンチコートが手放せない。
〇〇という仕事。
結局この三つは何度過去に遡ってやり直しても変わらなかった。どうやら運命と言うやつには、何らかの法則性があるらしい。そしてもう一つ変わらなかったもの。
「師匠、エクレア買ってきましたよ」
「·····おぅ」
何度過去に遡って人生をやり直しても、コイツは俺の隣にいて、俺の好きなエクレアを律儀に買ってくる。
「駅に新しい店が出来てたんで、そこで買ってきました」
「ごくろーさん」
最初にタイムマシーンを使った時の心配は、どうや杞憂だったみたいだ。
END
「タイムマシーン」
1/22/2024, 11:30:06 AM