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 雪面に落ちる木立の影が美しかった。腰からゆっくりと根本に座り込む。首から下げられた一眼レフを弄りながら肩を撫で下ろした。ふ、と吐く息を追いかけるように見上げると突き抜けるような真っ青な空が目に染みて、喉奥を引き攣らせる寒さを一瞬忘れてしまう。雪を掻き分けるように咲く花。小鳥の囁やくような囀り。枝に積もった雪が溶けて葉に弾かれる音。雪解けとともに連なる冬木は、満開の桜へと大空に枝を伸ばすのだ。少しずつ歩み寄る春の気配に心を踊るとともに今ある景色を宝物のように抱きしめる。
 青々と咲く花だけが全てではない。吹き付ける風と混ざりながら舞い上がる雪の粒は六角形の結晶であり、冬に降る花なのだとレンズを通して視てきた。牡丹雪や花弁雪。段々と強くなる風に押し上げられると、迷ったようにしばらく漂いながら銀世界へと姿を隠していく。幻想的な花束が滲ませる光に、自然と指はカメラのシャッターを切っていた。春の陽だまりの中へと移ろいゆく瞬間を永遠に残していたい。消え行く影へと手を伸ばすように。

/ 花束

2/10/2023, 9:14:32 AM