沙羅双樹

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『既読がつかないメッセージ』

「おはよう!」

「ねぇ、今度の日曜日会えない?」

「おーい」

「なんかあった?」

「大丈夫?」

数日経っても既読がつかない。
こんなこと、今まで無かったのに。

どうしたんだろう…。

私、なんか変なこと言った?
なんか失礼なことでもしたっけ…。

最近、仕事が忙しくてなかなか相手できてなかったけど、それに怒った?

いや、にしてもこんなに既読つかないなんておかしい…。

あぁ、だめだ。
悪い考えばかりが脳内を巡る。

きっと、大丈夫。

「なんでもいいから返事、ちょうだい?」

これも、既読はつかない。

プルルルルル…

電話も出ない。

怒ったの?寂しかった?そっちも忙しい?スマホ壊れた?え?メッセージ送りすぎ?圧すごい?嫌われた?なんで?なんで既読つかないの!?

…だめだ、一旦落ち着こう。
ここで考えててもだめだ。

「今から家行ってもいい?」

返事はない。
でも、私はすでに車を走らせていた。

もうなんでもいい。
嫌われてても、怒ってても、許してくれなくても。

ただ、無事ならそれでいい。

彼のマンションの前には救急車が止まっていた。

―まさか。

マンションから運び出される人が見えた。

女性だった。腹部や胸部は血だらけだった。

とりあえず彼じゃなくて良かった…。

…ん?

よく見ると、救急車の他にパトカーも止まっていた。

するとマンションから、警察と一緒に出てくる男が見えた。

「嘘でしょ…?」

彼だった。

なんで?どうして?

何が起きたのかさっぱり分からない。

あのあと、ニュースで知ったのだが、
彼は好みの女性を家に連れ帰り、監禁していたらしい。
連れ帰ったのは、ちょうど既読がつかなくなった日だった。
その後、彼は女性に対して数日に渡って性的暴行を行い、最後には刃物で複数回刺したのだそう。
そして、満足した彼は自ら警察に通報した。

あまりに衝撃でしばらくは部屋で固まっていた。

私のことは愛してなかったの?
私には何が足りなかった?
なんで私じゃなかったの?
私じゃだめだったの?
なんで?なんで?
私からの連絡は放っておくほど、被害者のことが好きだったの?
私の方がよっぽど貴方を愛してるのに?


…だめだ、私、まだ貴方のことが好きみたい。
私、全然貴方のこと知らなかったんだね。
ごめんね。

私、貴方のこともっと知りたい。
貴方のこと知って、もっと貴方に似合ういい女になって、必ず会いに行くからね。



まずは…好みの女性を見つければいいの?

9/21/2025, 8:19:15 AM