はた織

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 赤い蝋燭に火を点けて、
 一本目は父に贈ろう。
 読書好きな父の読み聞かせが聞きたいな。
 二本目は兄に贈ろう。
 料理と植物を愛する兄と一緒に花咲く中庭でご飯を食べたいな。
 三本目は弟に贈ろう。
 図書館も海もどこにでもついて来てくれる弟にあげたいな。
 四本目は母に贈ろう。
 母には何を願おうか何を願えばいいかな分からない。

 赤い蝋燭の火をふっと消して、
 白い指先に火をぱっと点けた。

 私の指先に揺らめく炎が爪を溶かす。
 皮膚を破り、肉を焦がし、骨を爆ぜさせ、細胞を崩して、神経を狂わせる。
 温かさは、熱さとなり、痛みとなり、輝きとなる。
 人差し指を焼き尽くす炎に夢を見ろ。

「ママに抱きしめられたいよ」
                (250317 叶わぬ夢)

3/17/2025, 12:43:23 PM