タイトル【面倒】
文字数 370文字くらい
音の出ぬ笛のような喉は、酷く渇いている。これではとても喋れたものではない。鼻水が垂れる。呼吸さえ儘ならぬ。寒気がする。何より怠い。
まるで鉛の身体を引きずって、腹這いに畳の上を進む。ひんやりとして心地がいい。しかし、すぐに緩くなる。
体温計を見付けると、脇へ押し当てた。混濁する意識の中に、頓狂な機械音が入り混じる。夢現にも似た、渾沌の合間に私はいる。脳が溶ける感覚がする。必死になって体温計が示す数値を認めた。
38.4℃
どうやら、いや、やはりと言うべきか。案の定、私は風邪をひいていた。さて、どうしたものか。誰かに連絡したり、病院に行ったり、何をするべきだろうか。考える度にヤジロベエの如く、思考がゆらゆら揺れて定まらない。その内に霧散して、下手の考えのようになる。
もう考えるのは止そう。そう決めて、横になることを決めた。
──了
12/16/2023, 1:01:48 PM