【誰かしら?】
親しくしていた女性が最近亡くなった。生前から自分は長くないと悟っていたらしい。
私はそんな話をちっとも聞いていないし、隣にいた男の人が泣きながら葬式の会場を出て行ったのを見て私は泣くことも出来ない。私は彼女の姿を見つめていることしか出来なかった。
彼女の周りには私しかいない。さっきまで出ていった男と私以外には誰も人がいなかったのだ。彼女にはきっとたくさんの人がいただろうから、これから人が来るのだろうが今は誰もいない。足音がした。
私はあの男が来たと思って振り返る。いや、振り返ったけど、あれは女性?
「誰かしら?」
「私は、私はあなたの知人です」
「うふふ、嘘よ。分かっているわ」
「目の前にどうしているんですか?あの男の人どっか行ってしまったし」
「会いたかったの最後に。あの男はいつもあんな感じよ、私の相方だったんだけど」
「相方……好きだったんですか?」
「ううん、お仕事の相方だからそういうの無かったわよ。変な奴だったし」
「変な奴?」
「そう、色んなものを追いかけていたわ」
「そっか……」
「泣くことないじゃない。私はまた会いに来るわよ」
「その時まで約束ですよ」
「もちろん」
目の前にいた知人の女性が消えて、男の人が何かを持って走って帰ってきた。
「最後に花でもあげようと思って、アウトかな?」
「セーフです、喜んでくれますよ」
「本当に?僕いつも変なやつって言われてたから」
「本当は違うのかもしれませんよ」
「そっか」
「はい」
3/2/2025, 1:04:18 PM