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とある職場で働いていた時の話である、


その職場自体がなくなってしまうという話が出て、大半の人が辞め、私達2人のアルバイトが残った


上司は別の店舗の方におり、滅多にこの小さな職場には来ず、1人の男性従業員が私達の世話をしてくれていた。ナフタリンの匂いだろうか、嗅いだことのないとても独特な匂いがする人だった



私達には仕事があるが、その男性従業員は仕事がないのか仕事関連で呼びに来た時以外は事務所で寝ていた、不思議とサボってるとかは思わなくて何か病気なんじゃないかと思っていた


いつも、その従業員の人が鍵を開けてくれて職場に入れるのだが、ある日を境に来なくなった


上司に電話をして職場には入れるようになったのだが、その従業員の人がどうなったのかは何も聞かされなかった。だけど何となく感じるものがあった




しばらく経ったある冬の日、窓を閉め切ってるにも関わらず、あの独特なナフタリンのような匂いが部屋にいた私の周囲に広がった、その時感じた。やっぱりかって、


そこまでの関わりはなかったけど、お別れに来てくれたんじゃないか、優しい人だろうから私の心配をしてくれたんじゃないかって。都合の良い話かもしれないけど


もう十年も前の話になるけれど、その人のことはずっと忘れないだろう…、このような強烈な思い出を残してくれたのだから…

8/29/2024, 6:26:57 AM