やわら

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小さな明かり一つさえ、スマホで事足りてしまう今の時代。現代っ子の私にとって、蝋燭は蚊取り線香と同じくらい縁遠いものだ。

そして、何か特別な日にしか灯らない。
特別の光だった。

例えば、誕生日ケーキに刺さった小さい蝋燭。
今にも消えそうなほど小さいのに、何故かなかなか消えなくて、必死で息を吹き掛けた。

停電の時に引っ張り出されもしたっけか。
普段の食卓なのに明かりだけが違って、揺らめく暖色の光の中、すごく胸がどきどきしたのを覚えている。なんだかちょっとロマンチックだった。

噂には聞く法事なんかとも縁遠いから、蝋燭の灯火を見て瞼の裏をよぎるのは、そういう少し非日常でわくわくしてしまうような想い出ばかり。

だからかな。
小さく揺らめく火の暖かさと、ブルーライトとも別の眩しさが時折恋しくなるのは。

百物語なんかに使われるくらいだから、その寿命が短い、儚ささえ感じさせる光に、きっと昔の人達も何かを感じていたのかな。そうだといいな。

それじゃあ私のお話、聞いてくれてありがとう。
ふう、と一つ。私はゆらゆらと煌めく非日常の灯火に息を吹き掛けた。

『キャンドル』

11/19/2024, 3:07:45 PM