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【やさしさなんて】

優しさは、自分にとって必要だけど、いつでも必要なものではないらしい。

優しさなんていくらあってもいいじゃないか、と思うだろう。

けれど私は、優しさからの言動を疎ましく思うことがあるのだ。

そんなことは言われなくても分かっている。
それは自分でやりたい。
やってほしいのではなく、教えてほしい。

私はそんな言葉を何度も何度も、数えきれないほど飲み込んでいた。
優しさ、つまりは善意からの言動だと分かっているからこそ、言えなかった。

でも、それらの優しさがあったからこそ助かったこともあるし、嬉しかったこともある。それゆえに、私に全てを跳ね除ける勇気がなかったのも事実だ。黙って受け入れていた部分だって確かにある。

だけど、それなら私は、どうすれば良かったのか。
自分のためにと言葉をくれたり行動してもらったりしたとき、冷たい言葉を突きつければ良かったんだろうか?

それはそれできっと、相手の気分を害したことで罪悪感に苛まれていただろう。
せっかく優しさを持って接しているのにと、悲しませたり怒らせたりしただろう。
そしてそのあと、私に優しさが向けられることはなかったかもしれない。

私はずるいのかもしれない。優しさの全てを受け入れたくはないが、完全に失いたくもないわけだ。
それでも私は、優しさという名のお節介や経験泥棒を許すことができなかった。

きっと、きっと。
あなたからのやさしさなんて、なくても生きていける。
いや、生きていかないといけないのだ。
あなたがずっといるとは限らないから。
だからどうか、私から
意思を、経験を、選択を、奪わないでくれ。

8/10/2025, 11:45:46 AM