未来から来た記憶がある。私はそのことを誰にも話せずにいた。幼い頃から、私は自分が未来から来た人間だと信じていた。夢の中で見る風景は、どこかで見たことがあるような気がする。未来の街並み、高いビルが影を落とし、空には飛行する車が舞う。だが、そんな風景は今の世界にはない。
「おかしいな、ここはどこだろう?」
私は何度もそう呟いた。学校の授業中、友達との会話中、何気ない瞬間に未来の記憶がフラッシュバックする。私は一度も訪れたことのない場所を知っている。そして、その中に自分がいる。未来の私は何か大切なことを伝えようとしているかのようだった。
ある日、図書館で古い本を見つけた。時間の流れと記憶。そんなタイトルだった。ページをめくると、時間旅行の理論が書いてあった。そして、その一節に目が止まった。「未来の記憶は過去へ送られることがある。あなたが忘れた未来の自分が、今のあなたに警告を送っているのかもしれない」。
その瞬間、私は悟った。未来の私が警告を送っているのだ。だが、警告の内容は曖昧だった。ただ、ある日突然、未来の私が見たものが現実に現れた。空に浮かぶ巨大な球体、遠くで聞こえる爆音。それは私が見た未来の風景だった。
その日から私は未来の記憶を手帳に書き始めた。未来の自分が何を伝えようとしたのか、何を防ぐべきなのかを。そして、ある夜、夢の中で未来の私と話した。彼女は言った。
「あなたが今行動しなければ、私たちの未来はなくなる」
目覚めた私は、手帳に書かれた未来の記憶を頼りに行動を始めた。環境を守る活動、科学者の支援、そして小さな変化を生み出す努力。未来の私から受け継いだ記憶は、今を変える力を持っていた。
私は未来からの警告を現実に変えることができたかどうかはわからない。だが、私の行動が未来に影響を与えたと信じている。未来の記憶は、過去の私に未来を守るための道筋を示してくれたのだ。
私は今、静かに夜空を見上げる。月は綺麗だ。そして、どこかで未来の私が微笑んでいるような気がした。
完
お題:未来の記憶
2/12/2025, 11:46:59 AM