NoName

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ひとりになりたかった。
暗い公園。街頭はひとつしかなくて、私のいるところには届かない。なんだかそれがスポットライト見たいで、その光が私に向く事は無いのだろうとぼんやりと眺めながら、自嘲気味に笑って顔を伏せた。
何も考えなくないのに。次々に溢れてくる自分を責め立てる言葉は、胸の中でぐるぐると廻って黒いシミを作っていく。

「ハニー」

___声が聞こえた気がする。愛しいヒトの声。暖かい声。甘い、蜂蜜のような。
顔を上げると視界いっぱいに赤が広がる。
「え」
「え、じゃないよ!ハニー!何度も声を掛けたのに、気づいて貰えないなんて俺ちゃんもう泣いちゃう!嘘、実はそんなに声掛けてないよ。3回くらい。どうしたの、こんな時間にこんなところでひとり。心配したよ。」
僕を正面から優しく抱き寄せながら額にキスを落とす。あまりにもあたたかくて、じわりと瞳に涙が浮かんでしまう。

泣き出す僕に戸惑っている彼の背に腕を回して、強く、つよく。抱きしめた。離さないで。

不安定な足場で互いに抱きしめ合う光景は、きっと可笑しくて。奇妙に映るだろうけれど。

9/23/2024, 1:50:07 PM