子ぎつねのフウタと子うさぎのフワリは秘密の友達。
きつねはうさぎの天敵だから、フワリが「きつねの子と友達になった」なんて言ったら、みんなに「やめなさい。あなただけじゃなくて、家族もきつねに意地悪されるわ」って言われるんだろうな。うさぎはきつねを乱暴で意地悪だと思っている。
フウタだって「うさぎの子と友達になった」なんて言ったら、みんなに「やめろよ。あんな臆病者と遊んでも楽しくないだろ」と言われるだろうな。きつねはうさぎを臆病な嘘つきだと思っている。
フワリは知っている。フウタがとても優しいことを。
フウタも知っている。フワリがとても勇敢なことを。
フワリとフウタが遊ぶのは風の丘だ。きつねは風の丘には何もなくてつまらないと言うし、うさぎは風の丘は隠れる場所がらなくて危険だという。だから、ふたりにとって風の丘は誰にも見つからずに遊べる最高の場所だ。
「ねぇ、フワリ。明日の夜、風の丘に来れない?」
「え?うさぎは夜は寝るのよ?」
「うん、知っているよ。でも、きて欲しいんだ」
その日の夜、フワリは寝床で考えた。夜の世界ってどんな世界だろう。フウタがあんなに誘ってくれるんだし、行きたいなぁ。でも、お父さんもお母さんもきっと許してくれないよな。夜中に抜け出すなんてできないし。どんなに考えてもいいアイデアが思い浮かばない。
フワリは寝床から起き出して、お父さんとお母さんの所に行った。フワリの深刻な表情にお父さんとお母さんは驚いている。
「フワリ、どうしたの?どこか痛いの?」とお母さん。
フワリは頭をふる。
「お父さん、お母さん、明日の夜お出かけしたいの」
お父さんもお母さんもさらに驚いた顔をした。
フワリはお父さんとお母さんに全てを話した。仲良くなった友達に夜、遊びに誘われたこと。その友達がきつねであること。でも、とても優しい友達であるということ。
お父さんはしばらく黙って何か考えていた。
「フワリ、夜にひとりで遊びに行くのを許すことはできないよ。やはり夜の森は危険だからね。私が一緒に行くことにしよう」
フワリの顔がぱあっと明るくなった。
「お父さん、行ってもいいってこと?ありがとう」と言ってフワリはお父さんに飛びついた。
「フワリがきちんと話してくれて嬉しいよ」とお父さんは言った。
いよいよフウタとの約束の日。
初めて夜の森に出る。夜の森は恐ろしい程静かで真っ暗だ。フワリはお父さんと離れないようにぴったりとくっつく。
森を抜けると途端に夜空が広がった。空一面の星にフワリは息をのむ。風の丘に着くとすでにフウタが待っていた。お父さんが「行っておいで」と微笑む。
「フウタ〜」
フワリの声にフウタが嬉しそうに手を振る。
「フワリ、向こうの空を見ていて」とフウタ。
すると、すーっと星が流れた。びっくりしていると、次々に星が流れる。
「うぁー、すごい!」一言そう言ったきり、フワリは何も言えなくなった。30分程見入っていると徐々に流れる星が少なくなってきた。
「フワリがくる前に流れ星にお願いしたんだ。フワリが来ますようにって。そしたら、フワリが来てくれたんだ。ありがとう」とフウタ。
「フウタ、ありがとう。私、全部お父さんに話したの。そしたら、お父さんが連れてきてくれたんだ」とフワリ。
フワリはフウタと別れてお父さんの所へ走って行く。
「すごかったなぁ。フワリ、いい友達だな」とお父さん。
フワリは自分が褒められた様に嬉しくなった。
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お題:宝物
11/21/2024, 8:14:50 AM