『嘘じゃないんだよ』
「ねぇ、この世界が夢だとしたらどうする?」
「…は?」
書類から顔を上げた彼が眉を寄せる。「何言ってんだ?」という言葉が聞こえてきそうだ。
「……くだらないこと言ってないで仕事しろ」
「え〜!そんなに冷たいこと言わなくてもいいじゃ〜ん!!」
「はぁ……どうせ、エイプリルフールの嘘だろ」
ため息を着きながら言った彼はまた書類に視線を向けた。沈黙が訪れる。
私が口を開きかけた時、何処からか彼の名を呼ぶ声がした。
「ほら、あの子じゃない?行ってきなよ。後は私がやっといてあげるからさ!」
彼は小さく「…ありがとう」と言うと、部屋を出ていった。いつもの無表情だったつもりだろうが、嬉しさが滲み出ていた。あの子に頼られるのが嬉しいのだろう。
私は窓の外を見る。綺麗な青空に月が浮かんでいた。赤い月が。
「さぁて…彼はいつ気づくのかな?」
背伸びをしながら見た時計は、午後1時を指していた。
【エイプリルフール】
4/2/2026, 6:48:42 AM