『大切なもの』
祖母はいつもつげのくしを手にすると「これは大切なものだから」と言いながら使っていた。
祖父から贈られた数少ない物の1つで、祖父が亡くなってからはなおのこと大事にしていた。
そんな祖母も亡くなり出棺の日、皆で祖母の周りに白菊を添え、趣味で作っていた人形や家族の写真を置いた。滞りなく祖母を見送り少し落ち着いた夜
ふと気付いた。大事なつげのくしを入れ忘れた!
あんなに大事にしていたのにどうして入れ無かったんだろう‥。慌てて祖母の部屋のへ行き、鏡台の引き出しを開けると、あるはずのくしが何故か無かった。大切なものだから祖母は自分で持って行ったのだろうか‥。
4/3/2024, 6:44:28 AM