雨の香り、涙の跡――
人は幸せや悲しみを誰かと分かち合えるが、苦しみや切なさを誰かと共有するのは難しい。似たような言葉だが、深堀していけば味の違う意味が隠されている。
土砂降りの雨の中、私はひとり道路に棒立ちでいる。全身ずぶ濡れがなんだ、今の私は車に轢かれようが構わない。一緒に歩いたあの日から雨の日の独特の香りを好きになったが、今日をもって嫌いな香りになりそうだ。大粒の雨が私の頬を伝うが、この雨が私から流れ出す涙の跡なのかなんて分かりゃしない。私は泣いてなどいない……決してな。
6/19/2025, 3:10:34 PM