門を出ると、ドドドドッと地響きがした。
見ると、大勢の人が土埃を上げてこっちへ走ってくる。
「え! 何! どういうこと!」
呆然とする私。隣にいた同期が肩を叩く。「走るよ!」
「ちょっと待って! うわああああっ」
みるみる疾走軍団に飲み込まれる。スーツを着たサラリーマンや、ハイヒールの女性、白髪混じりのご老人たちが見事なフォームで私を抜き去っていく。そんな中、髪をなでつけた若い男の人が涼しげに隣へやってきた。
「新入りさん? 最初はしんどいかもしれないけど、慣れたらそうでもないから。頑張って」
「あ、ありがとうございます。……あの、これ、どうして走ってるんですか?」
「うーん。怖い魔物が追ってきてるらしいよ」
「らしい、ですか」
「そう。本当のところはだれもわからない」
その先輩はにこりとする。
「走りたくなければ走らなくていい。魔物に食べられても、魔物を殴り倒しても、飼い慣らしてもいいんだよ。全ては君次第さ。君はどうしたい?」
問われて、私は少し考える。
隣を並走する先輩はどこか楽しそうに見えた。
「とりあえず、走ります!」
5/30/2023, 12:38:12 PM