なぜ泣くの?と聞かれたから
「お兄さん、なんで泣いてるの?」
そう聞かれたから、僕はこう答えた。
「嬉しいんだよ。心の底から。」
「嬉し泣き?でも、嬉しそうに見えないけど。」
僕はどんな表情をしている?と聞こうとしたが、話しかけてきた子供は友達に呼ばれて行ってしまった。
しかし、なんで泣いていたんだろう。なんで、公園の端っこで蹲っているんだろう。ここにずっといよう。もう、誰とも話したくない。家の場所も分からないのだから。
「なあ、室田ってこのあと暇?」
「すまん、このあと弟と公園に行って遊ぶ約束なんだ。じゃ、またな。」
学校が終わって階段を急いで駆け降りる。早く帰らないと、宏斗との約束の時間に間に合わない。駆け足で公園に向かった。
「お兄ちゃん、いた!」
宏斗が横断歩道を渡っていた。僕を見つけてはしゃいでいる。なぜ、公園で待っていないんだ。危ないから早く渡れ。気づくと、宏斗のすぐ近くまで車が来ていた。
「逃げろ、早く!」
弟が遠くまでふっ飛ばされた。頭から血を流していた。なぜかとっても、嬉しかった。頭がおかしくなったようで、涙も出なかった。そして、何も考えずに宏斗を連れて、遊ぶ約束をした公園に向かった。
ずっと、弟の面倒を見るのが嫌だったのかもしれない。だから、死んでくれて嬉しかった。のか?もう、どうでもいいや。何もかも忘れよう。考えないようにしよう。
「でも、嬉しそうに見えないよ。」
あの子供の言う通りかもね。弟が生き返らない、そのことを否定しようと必死なんだろうね。
8/20/2025, 2:45:30 AM