『暗がりの中で』
暗がりの中で、君の声がする。
「人間なんて嫌いだよ。」
君は言った。
「どうして?」
と僕は聞く。
「面倒だから。」
と君は答えた。
「何が?」
と聞くと、
「人間関係が。」
と返ってきた。
暗がりの中の君との会話。
僕は君の声しか知らないし、
君も僕の声しか知らないはずだ。
これは君との会話であり、僕の自問自答でもある。
ここは、僕と君だけの世界。
同時に、僕だけの世界。
他には何も無い、静かな空間で、僕と君は言葉を交わす。
「嫌いな人間関係ってどんなの?」
「この先ずっと続いていくであろう関係。家族とか、恋人とか。」
「友達は?」
「友達は平気。どうせ学校卒業したら終わるんだから。」
僕は幸せにはなれない。幸せを避けているような自覚はある。
明るい場所に、身を置きたくない。
暗闇で、雨の音でも聞きながら、身を固めて、静かに、息を殺す。
そんな風でいい。僕の日常はそんな風でいい。
周りとは当たり障りのない関係で、少し離れたところから、光を眺めていられればいい。
結論。
結局僕は、人が嫌いだ。
でも、
僕の中で自分が叫ぶ。震える声で、およそ叫びとは言えないような叫び声で。
「でも、何か変わるかもしれないよ。
だって、僕のこと、気にかけてくれる人もいるんだから。ちょっと自信もってみようよ。優しい人を突き放すのはやだよ。
大丈夫。きっと大丈夫だよ。」
「何が大丈夫なんだよ。」
暗闇の向こうから、君の声が聞こえる。
知ってる。本当は分かってる。強がってるだけだって。
それでも、君はきっと一緒に居てくれるから。
きっと。たぶん。きっと。
10/28/2023, 11:16:22 AM