「拓也(たくや)~二人が来るまでトランプしよ~ぜ~」
「お、いいよ~」
私達は机にトランプを出す。拓也カードきって、と言うと
「葉瀬(ようせ)ってカードきれないもんな~」
とちょっと馬鹿にしてきた。うっせぇ、細かい作業は苦手なんだよ。
「......はい、葉瀬の分」
「どーも~」
私は拓也からトランプを貰うと揃っているものを全てはけた。
「私五枚だわ~」
「俺六枚~」
なるほど、ジョーカーは拓也が持ってるわけだね。頑張って五枚全て揃えてやるよ。
「............」
「......どっち?」
「聞かれても答えねぇよ」
「ケチだ」
「ケチじゃねぇ」
ぴっ、とカードを取るもジョーカー。
「...ふ」
「え、何?」
「いやぁ?なんでも?」
拓也は私を見てニヤニヤと笑う。
「じゃあ俺取りまーす」
私は無言でカードを二つ差し出す。
「どっち?」
「言わない」
「ケチー」
「拓也にだけは言われたくない」
拓也は一枚一枚取るフリをして、こちらをじっ、と見る。何?何?私の心臓はバクバクと音を立てていた。
その目に吸い込まれそうで、怖いけどなんだか。
「......これだ!!」
ピッ、とカードを取る。
私の手元に残ったのはジョーカー。負けてしまった。
「いえーい俺の勝ち~」
「うぅ......」
「葉瀬顔にめっちゃでるよな~分かりやすっ」
「嘘!?マジかよ!!」
拓也の楽しそうな顔を見る。
私はこの顔が____
「ごめーん!遅くなった~!」
ガチャッと開けて入ってきたのは秋(あき)である。
「秋...!...遅い、俺らトランプしてたんだぞ」
「ごめんって」
「...寂しかった。から、撫でて」
拓也は秋を見た瞬間、構ってオーラを全面的に出し始めた。しょうがないな、と言わんばかりに秋は拓也の頭を撫でる。中睦まじい二人だ。邪魔する気はない。
「お二人さんよ。ここに居るのが見えんのか?」
ただ、ここは私の家だよ?イチャつくのは他でやってくれ。
「ごめん葉瀬ちゃん!」
「まぁ許すぅ~」
「流石葉瀬ちゃん、寛大な心~」
「俺は?」
「駄目」
「えぇ~」
秋はぽよぽよ、と周りの空気を和ませている。凄く温かい。
「じゃあ次は三人でトランプしようぜ~」
「いいね~」
...これは昔の話。今の話ではない。
この時の私は彼の笑った顔が嫌いだった。
お題 「スマイル」
出演 葉瀬 拓也 秋
2/8/2024, 4:56:54 PM