いつまでも捨てられないもの
彼が羨ましかった。
雨に打たれながら、下駄箱前で歌って踊る彼が。
一度濡れれば、どれだけ濡れても同じだ。
そう体で表現していた。
周りの人から「馬鹿だな」「恥ずかしくないのかな」なんて言われてはいるが、誰も彼も表情は明るい。
暗い雲のしたで、彼はいちばん眩しかった。
私は知っている。
恥を恐れて何も出来ない人は攻撃的になるのだと。
馬鹿だ!恥ずかしいやつだ!と笑うことを。
恥を捨てろ。恥を捨てろ。
そう自分に言い聞かせても、やっぱり恥ずかしい。
誰もが捨てれないものを、彼は一番に捨てた。
そうして彼は、誰よりも楽しそうに生きていた。
8/17/2023, 3:03:54 PM