よく晴れた朝だった。雀の囀りと窓を抜ける陽の光はまるでまだ夢の中みたいに思えた。目を擦り伸びをする。大きく息を吐いて目を閉じ、雀を聞く。僕の心模様を除けば、それは完璧な朝だった。
何かを諦めたみたいに目を再び開き部屋を見渡すと薄日が壁に道を描くように一直線に走っている。陽に照らされた細かな埃がいちいち綺麗だ。こんなものでさえ、僕には綺麗だ。
窓を開けると立ち込める鬱屈な空気を洗い流すかのような心地よい風がふわりと肌を撫でていく。視界の上の方で前髪が揺れる。風にも旬があるとするならそれはきっと四月なのだろうなと思う。
前髪越しに青空が覗く。電線で休む何羽かの雀が五線譜に全音符が書かれた譜面みたいに見える。真っ青な空に一つだけ雲が遊泳するように浮いている。目に映る全てが穏やかな絵になる。
ぼんやりと雲を眺めていた。そこにはきっと時間という概念はなかった。空の青と雲の白のぼやけた境目を、もう二度とその形には戻れない雲の全体を交互に眺めていた。
果たして僕はどこからが僕で、どこまでが僕なのだろうか? いつまでの僕が僕で、いつからの僕が僕なのだろうか。
また今日が始まってしまった。
4/23/2024, 4:47:17 PM