とある恋人たちの日常。

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 今日、かねてから付き合っていた彼女と一緒に暮らし始める。
 
 休みの関係上、俺の方が先に家に荷物を入れられた。
 彼女の荷物はこれから一緒に片付ける。
 片付けると言っても、洋服関連は流石にいじりません。
 
 そんな時、彼女の盛大な悲鳴と共に景気よくガラスが砕ける音がした。
 
「え!? 大丈夫!!?」
「お気に入りのお皿が粉々になりましたー!!」
 
 薄水色で彼女も俺も好みの色の皿が……皿とは思えないほど無惨なものになっていた。
 
「ひとまず動かないで。怪我はない?」
「うぅ……。怪我はないと思います」
「分かった。変に動くと怪我するかもだからまずは動かないで。掃除したら怪我してないか確認するね」
 
 はいと返事をするが、明らかにしゅんとする彼女。そんな恋人を横目に、俺は掃除道具を持って割れた皿を片付けた。
 
「うぅ……初日からやっちゃいました……気に入っていたのに……」
 
 皿を片付けた後、彼女を立たせて軽く彼女を診る。医療道具はさすがにないけれど、救急隊として日々仕事をしている俺としては、このくらい普通にできた。
 
 本当にお気に入りの皿だったのだろう。彼女のへこみようが見ていて痛々しい。
 
 特段怪我もないことを確認した俺は、優しめに抱きしめる。
 
「上手くいかなくてもいいんだよ。失敗も思い出にしていこう」
「……はい。お皿は悲しいですが、思い出にします」
 
 俺は彼女の背中を落ち着くようにぽんぽんと叩く。そしてふたりの予定を頭で確認した。
 
「お皿、明日買いに行こう。ふたりでお気に入りになるような皿を探しに行こう!」
 
 彼女は驚いた顔を向けたかと思ったら、少しずつ嬉しそうに微笑み、俺を強く抱き締め返してくれた。
 
「はい、お気に入りのお皿、探しに行きましょう!!」
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:上手くいかなくたっていい

8/9/2024, 2:12:27 PM