雨音

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『フェルナ!!フェルナ!なぁ、そこに居るんだろう?居るなら…返事をしてくれ…俺は、もう…』
大きなコンクリート壁の向こうから、かつての幼馴染みの声。戦争が始まり、彼との国の間に大きなコンクリート壁が設けられ、二つに割れた私達。
貴方は諦めない。だから、手が血で滲んでも、私が見えなくても、泣いて、叩いて叫んで私の名を泣き叫び続けるの。

「ここよ!イヴェルク!!」
『あぁ…フェルナ…!俺、俺、…君に十年、あえないあいだ…何も感じなかった…あぁ…』
懐かしい貴方の声。
貴方の、頭1個高い背が。エメラルドのように美しい目が。紺色のくせっ毛が…忘れられないの。

「イヴェルク…今でも愛してくれる…?!」
『もちろんだよ、フェルナ…!あぁ、君が見たいよ。…会いたいよ…う゛ぅっ…』
胸が痛い。張り裂けそう。こんなにも愛しているのに。1メートルもすれば、貴方がいるのに…

『…っ!何するんだ!やめろっ!…うわぁあっ』
「イヴェルク…?!」
フェルナは思い出した。壁越しの会話は…死刑だということを。もしかしたら…イヴェルクが兵士に捕まった…?!

私は。ためらうことなく。貴方に会うためならなんでもする女よ。
「まって!!」

兵士の鎧がチャリ。となり、足跡がやんだ。
「私は。私はっ…!その男の会話相手よ!!私をおいていくと、また起こるわよ!」
『フェ、フェルナ?!』
「イヴェルク、いいの!」

すると、フェルナは後ろから殴られた気がした。しまった。こっちにもう兵士が…うっ…──


イヴェルクが私の名を叫んだ気がした。







『ルナ…フェルナ…!』
目が覚めたら、薄暗い地下牢にいた。
『あぁ…何でこんなことを…』
血で滲んだ傷だらけの手で私をだくイヴェルク。
そうか。私は…貴方に会いたくて…
「ごめんなさい…わたしっ…わた、しっ…」
涙が止まらなかった。十年。十年見られなかった貴方の顔が目の前に…
『君は…馬鹿だ…こんな無茶を…』
「死ぬときは一緒よ!おいていかないで!」

この再会が最後だと言うことが悔しい。悲しい。
そして、この国が憎たらしい。

『逃げよう。二人で。』
「もちろんよ…貴方のためなら、なんにでもなるわ!」

二人は再会を果たした。





お題
 恋物語 より

5/18/2023, 10:16:01 AM