かたいなか

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姿や形質がほぼ「子供のままで」大人に成熟する現象を、ネオテニーというそうで、
その代表例がウーパールーパーなのだとか。
職場の関係で頭ウーパールーパーなモンスターカスタマーと遭遇する確率の0%ではない物書きが、
今回もおはなしをひとつ、ご紹介します。

最近最近のおはなしです。
都内某所、某私立図書館は、おでんが美味しい食堂付きの飲食スペースがありまして、
そこでは月に0〜2回の不定期に、アルコールメニューが出されておりました。

店主は自称、日本一の古い呑んべぇ。
誰よりもたらふくお酒を飲んで、昔々にたいそうヤンチャして、
結果、それはそれは恐れ多い偉い御方から、バチクソに怒られたとか、なんとか。
そんな店主が提供する日本酒は、清酒に濁酒、老舗に新感覚、果ては和製ウィスキーまで、
酒好きがうなる逸品が、ズラリ並ぶのでした。

で、
そんな図書館のアルコールメニューで
ひそかに人気を博しておるのが
昨今の暑い東京にヒンヤリぴったりな
お好みの酒をお好みのだけ計量してトッピングする
お酒ソフトとお酒シェイクでして。

「アイスにブランデーは呟きックスで見た」
図書館の仕事が終わった後輩、もとい高葉井という名字の女性職員が、
チーズナッツの盛り合わせをチビチビつまみつつ、
梅酒チョコシェイクを楽しんでおりました。
「意外と日本酒も合うんだね」

その日はちょうど、アルコール提供日と同時に、おつまみ小皿が2品まで半額という幸運日。
高葉井は後輩のアテビを連れて、先輩の藤森も巻き込んで、女子会ならぬ職員会を敢行しました。

「2月に日本酒入りのチョコを見かけた」
シュガーハーフのバニラシェイクと少しだけ、アルコールを飛ばした国産ウィスキーなどチョイスした藤森は、自分のテーブルの下を気にしています。
「和製ビール入りのチョコも有ったな」
稲荷狐の子供が足元で、シャカシャカシャカ、
シェイクを強奪するべく、前脚もといお手々でちょっかいを出しておるのです。

しゃかしゃかしゃか、しゃかしゃかしゃか!
シェイク、シェイク、キツネによこせ!
子狐はお目々を輝かせて、美味しそうなバニラシェイクを狙います。
高葉井からはチーズを、アテビからは生ハムを、それぞれ貰いました。
なので、藤森からはシェイクを貰うのです。

「子狐。諦めなさい。こぎつね」
よこせ。よこせ。しゃかしゃか。
「お前はまだ、子供だろう。
子供のままでは、アルコールは体に悪いんだ」
しらない。よこせ。しゃかしゃか。

「こぎつね……」
くぅくく!くわぅ!きゃっきゃっきゃ。

あんまり子狐が美味を欲しがるので、
藤森は食堂の店主に顔を出して、
子狐も職員会に参加できるように、子狐用のホイップクリームを購入して、
そこに子狐でも安心な、米麹の甘酒を少しだけ、混ぜてもらいました。
子供のままでは、アルコールは飲めません。
だけど子供のままだって、甘酒は、安心なのです。

「ゆっくり食べるんだぞ」
鮭と牛と鶏のジャーキー盛り合わせも並べると、子狐はちゃぷちゃぷちゃぷ!
特製の甘酒シェークに幸福そうに、顔を突っ込んで美味を堪能しました。
たちまちシェークを空っぽにして、顔を上げた稲荷子狐は、まさしく子供そのものの惨状だったとさ。

5/13/2026, 5:40:25 AM