灰燼

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蕾が開き、花が咲く。自身の存在を主張するかのように、花弁が暗闇で燦然と輝いている。光彩を放つ満月と花の下で、女は一人の男を待ち続けていた。

急がないと。必ず今夜でなければ彼女には会えない。

一人の男が息を切らしながら夜の街を走っていた。なんとか夜明けまでに約束の場所へ辿り着いた男は、息を呑むほどに美しい情景にしばし呼吸をするのを忘れたようだった。

月と花の光の中で佇んでいる彼女は、夜の女王そのものだった。

二人は肩を寄せ合い、これまでの時間を埋めるように寄り添っていた。

やがて空が白み始め、女の体は徐々に砂のように崩れていく。

「貴方に会えて本当によかった。また会える?」

「会えるよ、きっと。ずっと待ってるから。」

とうとう太陽が顔を出し、女は男の足下に花の種だけを残して、跡形もなく消え去ってしまった。

7/23/2024, 12:34:14 PM