komaikaya

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 よく晴れた日にふいに流れてくる、続くような綿雲には、たくさんの天使たちが乗っているのだそうだ。
 彼らがどんな用事で雲の高さにまで降りてくるのかは、人のあずかり知るところではなく、そもそも、その存在に気づく者はほとんどいない。

 それでも、「姿を見た」「ことばを交わした」という者はちゃんといて──そんな者たちが語るうちの一つは、こんな話だ。


 天使たちはそれぞれに、真っ白な、幾対かの大きな翼を持つ、とされる。
 その翼はまるで大きな鳥のそれ、バサリと羽ばたけば、ちゃんと鳥のように、生え変わりの羽根が抜け落ちる。そしてその抜け落ちた羽根は、その瞬間──天使の一部ではなくなった証拠に、色を失くす。天使を視る者さえも認識出来ない、言わば『透明な羽根』へと変貌する。

 透明な羽根は、地球の重力に従って緩やかに落ち、だが意思を持って、その行く先を定める。目的の場所にたどり着いた羽根は、そこにあった、やはりこの世にたどり着いたばかりの命と魂に溶け込むことで、やっとそのカタチを失くす。

 遠い昔、大いなるものが天使に、その務めをまっとうするために与えたのは、光。
 その光はやがて、人の子の目にもそれとわかる翼となり──つまり。

 翼は光で、抜け落ちた羽根もまた然り。ひとひらの羽根であった光は、新しい命と魂の糧となるために溶けて、それは、これから生まれ来る誰しもが内に持つ、小さな灯火となる。

 その小さな灯火を囲んで、羽根を追い降りて来た天使たちは集い、歌う──どうかこの、一つの大いなるものから分かち合った光が、この世に生を受ける勇敢な子らの道標となりますように……と。

 灯火は時折、夢の中で──自らの元の姿、羽根のカタチをとっていた頃を思い出し、夢の主にその姿を現すことがある。
 視えないはずの透明な羽根は、そうやって人々に、その存在を認識されることとなった──。


「……つまり。これって、夢の話?」
「そう。だから、信じるか信じないかは……ね?」

11/9/2025, 1:23:43 AM