NoName

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私だけ、脚がない。
インジケータに記されている、記号の羅列を読み解くと、私だけ、このコックピットの中に閉じ込められている義骸であることが分かる。
昆虫の目のように反射する、ハッチの高分子体は、外の世界が戦争でできていることを教えていた。
この、スタンダード・マトリクスは、人類の皮膚の延長線上にある。
自由に動かせる機械義肢、それがスタマトである。
苦しみはなかった。
私の脚ではなかったけれど、偽物の脚ではなかった。
戦争、闘争本能をフルに使うための、獣じみた争い。
私は、そのために作られた兵士に過ぎない。

7/18/2023, 10:21:43 AM