「ただいま」
ずっと待っていた人がようやく帰ってきた。
「おかえり、」
そう返すと、寝ててもよかったのに、そう答える彼。
今は午前二時。
「話したいことがあるの」
彼の方を見てはいるけど、顔までは見なかった。
「今度にして」
そう言い放たれて、私の中で何が崩れた。
「最近そればっかり、もう疲れたよ」
最近ずっと考えていた事。明日こそ言おう。そう思って、ずっと先延ばしにしていた。そう、ずっと、そうやって先延ばしにしていたのは、やっぱり彼のことが好きだからなのかもしれない。
「じゃあね、言いたいことは言ったから」
そう言って出ていこうとする私の手を、ドアノブにかかる前に掴んだ。
「…っ、はなしてっ」
まさか私が拒絶するとは思っていなかったのか、目を見開いていた。
「だめ、行かせない、」
そう言うと、私の唇と彼の唇が重なった。
「…なんでっ、別れたのにっ」
そう言う私だが、頬になにかが伝っていた。
「俺がいいって言ってないから、別れてないっ」
と、私を抱きしめる。
「やだっ、なんで、ねえ、なんでなの?」
「私…私、もう疲れたんだよ」
「辛いの、苦しいの」
「ねぇ、離れさせてよっ」
泣きながら言う私に、
「ごめん、もう1回だけチャンスを俺にちょうだい?」
なんのチャンス?と聞くと、
「もう一度好きにさせるチャンス」
「やだよ、」
「…っ、なんで…」
そんなの決まってる、
「もう好きだからだよ」
「これ以上好きにさせないでよ」
「え、じゃあ」
「うん、いいよ」
そう言うと、さらに抱きしめる力が強くなる。
「もう絶対離さないから」
そう言った彼は優しくキスをした。
夜はどんどん深くなる。
真夜中の始まりだ。
Write By 凪瀬
5/17/2024, 12:19:39 PM