私の日記帳
わ、すごーい、魔法の本みたい。
子供の頃連れて行ってもらったショッピングモール。初めての遠出、見たこともないほど広い店内に様々なお店。これが都会だ。意味も分からずテンションが上がる。
およそ普段の日常では縁のないお洒落な雑貨屋さんに置かれていたアンティーク調の日記帳。一瞬で目を奪われる。
おねだりして買ってもらったそれは、持ってるだけで特別な事が起こりそうな気にさせてくれる。
ドキドキしながらページを開き鉛筆を持つ。しかしいざ真新しい螺旋用紙を前にすると動けなくなる。
こんな素敵な日記帳だもの。書く内容だって素敵なものでなければ。
しかし納得いくドラマチックな日常などそうあるばずもなく。中学生になり高校生になり、大学生になり。今だ日記帳は白紙のまま。一目惚れした高揚感と、せっかく買ってもらったのに勿体無いという貧乏性もあり捨てることも出来ず。
私の日記帳は。非日常な事柄を書き記すことを待ちつつアンティーク小物として部屋に飾られている。
8/26/2024, 2:36:18 PM