《糸》
「うーん、ねっむい!」
とある日の放課後、私、熊山明里はアナウンス室で一般下校のアナウンスをしたあと、大きく伸びをして呟く。なんだか今日はしこたま眠い。
「ねえサイトーウ、無駄に眠いからアナウンス室でちょっと仮眠とるから曲終わったら起こしてくんない?」
私は機械室で曲を流しているサイトウに言う。
「ん? 別にいいけどよぉ、暑くねーのか?」
「んなの気合いでなんとかすんの。じゃ、ちゃんと起こしてよねー」
「へいへーい」
サイトウがテキトーに頷いたのを確認して私はアナウンス室のイスに腰かけて目を閉じた。
★ ★ ★
変な時間に目を閉じたせいか、変な夢を見た。
「……であるからしてー……」
地学の先生の、なんとも言えないとてつもなく眠くなる声がする。どうやら地学の授業中らしい。
「って何よこれ!」
夢だからって油断してた。小指に変な赤い糸がついてる!!
「うわこれあれでしょ……、なつがよく言ってる、赤い糸の伝説、ってやつ……」
将来結婚する相手と赤い糸で繋がってる、ってあれ。
「んじゃま一応確認しときましょうかねー。私の結婚相手は……」
★ ★ ★
「おい明里起きろ! もうとっくに曲終わってんぞ!」
「は?」
突然耳元で大声がして、私はハッと目を開ける。
「あれ……、サイトウ?」
どうやらサイトウに起こされてしまったようだ。いいところだったのにー。
「ああ。つーか早く出ろ! 放送室閉めるぞ!」
「あーはいはい」
サイトウに急かされ、私は慌てて立ち上がる。
結局私の赤い糸は誰に繋がっているか分からずじまい。ま、これから決まることかもしれないし?
お楽しみは、未来に取っておくことにする。
(終わり)
2025.6.18《糸》
6/19/2025, 10:04:58 AM