通り雨
トラック一台がどうにか通れそうな道を歩いていた。
後ろから乗り物……トラックのような音がした。
かなり大きな音だったので、大型のトラックかなと
道が少し広くなっている場所の端によけ、
後ろを振り向いた。
トラックの姿……どころか人一人さえ見当たらなかった。
私が見たのは、こちらに迫る白いカーテンだった。
それの正体を理解する前に、
私はずぶ濡れになった。
息が苦しくなった。
というか、できない。
何が起きたのかわからなかった。
一人、息ができずもがきながらだんだん状況を理解した。
トラックの音ではなく、雨の音。
白いカーテンは、とても強い雨。
迫るように見えたのは、
ちょうど降る降らないの境界だったから。
濡れているのは雨だから。
息ができす、苦しいのは……マスクが濡れたから。
私はマスクを外した。
息ができた。
でも、雨が入ってきて苦しい。
雨は、私を頭の上から足の先まで
ずぶ濡れにした挙げ句、
何もなかったかのようにピタリと止んだ。
去ってゆく白いカーテンが見えた。
トラックも去った。
通り雨だった。
しばらくの間、トラックの音を聞くたびに
傘を握りつつ振り向くようになってしまった。
9/27/2024, 1:15:11 PM