管理人のレオルさんから預かったメモ用紙片手に右へ左へ、小慣れた動きで複雑な路地を抜け目的地に辿り着く。
酒場「白の憩い」レオルさん行きつけの酒場であり、酒の提供以外にも素材や武器の売買、依頼の受注なんかまでしている。寧ろ何でも屋だろという意見は当然禁句である。コンマ数秒のうちに店の外に放り出された少年など私は知らない。
少しドアを開けばそれまで隔絶されていた声が路地裏へと響く。今日は繁盛しているらしい。
「いらっしゃい、今日もおつかいか?」
カランコロン、と小気味いい音を響かせて己の役割に戻ったドアを背に、カウンターにいるマスターに預かった紙片をひらひらと振る。
それを見たマスターは待っていた、と言わんばかりの顔で何やら調合していた手を止め、徐ろに立ち上がった。
「珍しいな、3人用の依頼とは。まぁちょっと待ってろ」
「はい?」
マスターは紙片を眺めて少し驚いたような声を出すと、素材を取りにバックヤードに入っていった。
「3人用......?」
嫌な予感がした。依頼の達成がおつかいの内容に入っているのはなんら変ではない。レオルさんが課題と称して時々出すのだ。
彼を師事している手前、修行の一環だと言われれば断りようがないし、わざわざ断るつもりもない。
しかし、3人用となれば話は別だ。当然難易度は急上昇し、私一人で容易く達成できるものではないだろう。容易くとある川の対岸に辿り着きはするだろうが。
「誰かと組まなきゃなのか.......」
マスターが帰ってくるまでの間、思考すればするほど私の気分は落ち続けていった。
『落ちていく』
11/24/2023, 9:37:57 AM