はるさめ

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ふと街を歩いていて、泣きたくなった。
ずっとずっと忘れられない、懐かしい香りがしたから。
少し甘く爽やかなその香りは、あなたに本当によく似合っていて。
別れ際にふわりと香るのが大好きだった。
それは別れる時も同じだった。

あなたの声を忘れることはできた。
どんな顔をしていたのかも、ぼんやりとしか思い出せなくなった。
私にどんな風に触れるのかも、一緒に食べたご飯の味も、朧気にしか残っていないのに。
あなたのその香りだけは強烈に記憶に焼き付いていて、いつまで経っても忘れられない。

デートの度、別れ際にハグなんかするんじゃなかった。
似た香りを探す癖なんかつけるんじゃなかった。
別れる時、あなたの香りを消すぐらい強い香りの香水を纏っていけばよかった。

そしたらこんなに切ない思いをすることもなかったのに。

9/28/2023, 5:16:21 PM