こんな夢を見た。
どこまでも広がる海原の真ん中を、オールの無い小舟で漂っている。
見回すも島影は見えず、航行する船はおろか空を行く飛行機さえも見つける事が出来ない。
いつからこうしているのだろう。どうしてこんな舟に?
何も分からずに、ただ漂っている。
いつのまにか夜が来て、辺りは暗闇に包まれた。
夜空を彗星が流れてゆく。長く、白い尾を引いて。
そして、そのまま、水平線の彼方に、落ちた。
そこで目が覚めた。いつもと変わらない朝。
時計を見て、慌てて身支度を整え、学校へと向かう。
玄関でつまづき、転びそうになりながら。
家を出る時、両親は自分を見送ってくれただろうか?
空を見上げれば、長く、白い尾を引いて、夢の中で見た彗星が落ちてゆく。
ビルの向こうに消えた数秒後に、経験したことのない衝撃に身を包まれた。
体が粉々になる感覚。
自分という存在が、終わりを告げる。
そんな夢を見た。
たくさんのチューブに繋がれた、白いベッドの上で。
両親が泣いている。
登校途中の交通事故だったと誰かが言っていた。
もう二度と目を覚ますことはない、と。
「世界の終わりが来るとしたら、それを見届ける誰かはいるのかな?」
友達の一人がそう言って、肩を落とした夕暮れの河原で、
「大丈夫。終わりが来た後で、きっと誰かが目を覚ませば、すべては夢だったってことになるから」
そう言って笑ったのは、誰だったっけな。
小舟は海をゆく。
世界の終わりから逃げのびて、どこかに始まりを探し求めて。
今度目を覚ます時は、目の前に彼らの笑顔があることを信じて。
白く尾を引く彗星の軌跡を辿り、水平線の彼方の街に流れ着き、ここですべてを始めようと地に降り立つ。
長い漂流を終えて、この足で始まりの大地を踏みしめた時、薄れていた意識が、自分でもそれと分かるほどに覚醒していき…
そして、目覚める。
いつもと変わらない朝。
身支度を整えて家を飛び出す。
玄関でつまづき、転びそうになりながら。
振り返れば、呆れ顔の両親が窓の向こうで見送ってくれていた。
1/23/2024, 12:06:57 PM